うさこ
『めしねぶ』

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夕涼庵子の事件簿 【第3夜】
目黒シネマ公式ブログ、略して『めしねぶ』 スピンオフ企画
6夜連続 うさこを巡るショート・ストーリー




『夕涼庵子の事件簿』

第3夜

「黒のオルフェ」





画像 068

黒いコートを着た背の高い男は携帯電話を切り、テーブルの上に静かに置いた。

老舗喫茶店「イースト・ミーツ・ウエスト」は満席だったが、隅の席がひとつだけ空いていた。
黒コートの男はウエイトレスにケーキセットを注文した。
そしてぼんやりと窓にしたたる雨のしずくに目を向けていた。

       「傘、もってきたほうがよかったな」 黒コートの男は<彼>に言った。

ビルのあいだから強い風に流される黒雲がみえた。

   「ああいうの好きだなぁ」 黒コートの男は<彼>に言った。


気がつくとウエイトレスがトレーに色鮮やかなケーキの見本を持ちながら、男の横に立っていた。独り言をいう男に冷淡な視線を向けながら、どれにいたしますかと平静を装った声で言った。

黒コートの男はケーキを選びながらこう言った。


「モンブランをひとつもらうよ。<彼>はこれが大好きなんだ」


画像 078

霧雨のなかを黒コートの男はゆっくりと歩いた。
権之助坂も変わったなと軒を並べる店をていねいに眺めながら思った。
時代はめぐるものなんだ。冷たい風にコートの襟を立てた。


久しぶりの目黒川だった。

画像 097

画像 094

黒コートの男は少しうれしい気持ちになり、雨で散った桜の花びらを傷んだスニーカーで踏み潰しながらスキップをした。少年のように。
「わかっているよ、転ばないってば。心配性だな君は」 ランランラン♪


画像 108

しかし、案の定ずるっと転倒した男は強く尻を地面に強打。

しりイテ…

カバンの中身が地面に散らばった。
あわてた男は必死な形相で中身のものを拾い上げて、カバンに素早く戻した。
たいした物はなかった。手帳にノート、ボールペンに、そして……



「これ」屈みこんで拾い上げていた男の前にひとりの女子高生が立っていた。
「これ、落としましたよ」

女子高生は男に一本の彫刻刀を差し出していた。

ギョッとした表情の男は、ひったくるようにして女子高生から彫刻刀を奪い取った。

そしてありったけの全力疾走でその場から逃げ去った。変な走り方で。。。。。。


画像 107

<もう大丈夫だよ>と彼はいった。


        <もう逃げなくても大丈夫。ほら少し深呼吸して>


立ち止まった黒コートの男は、
          右手を手すりにもたせかけながら激しく乱れた呼吸を整えた。


   <心臓への負担は命を縮めるだけだぜ>と<彼>はいった。



「わかっているさ」 黒コートの男はつぶやいた。
いつの間にか雨はやんでいた。

 
 あたりはすっかり男のコートと同じ色に変わっていた。



<彼>はいった。



       「そろそろ時間だぜ」

画像 076





                                         ( つづく )







<本日の登場人物>

黒コートの男

ウエイトレス
女子高生





【次回予告】
黒コートの男の正体は? ついに夕涼庵子の前に犯人があらわれる?


第4夜

『或る真夜中の出来事』
 お楽しみに!

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